転職してから「思っていた職場と違った」「給料がほとんど上がらなかった」「人間関係が以前より悪化した」——こうした後悔の声は、理学療法士の転職でも決して珍しくありません。
実は、転職に失敗する人には共通したパターンがあります。
私は理学療法士として15年以上、回復期リハビリ病院・総合病院・整形外科クリニックなど複数の環境で勤務してきました。自分自身の転職経験はもちろん、同僚や知人の転職についても相談を受ける機会が多くありました。
この記事では、現場で見てきたリアルな失敗パターンを7つに整理し、転職で後悔しないためのポイントを解説します。
理学療法士が転職で失敗する7つの理由
① 給料だけで決めてしまう
提示された給与額だけを見て決めてしまうケースです。基本給は高くても、残業代が出ない、インセンティブの実態が想像と違う、福利厚生が薄いなど、トータルで見ると以前より条件が悪化していることがあります。
特に注意したいのが、社会保険(厚生年金・健康保険)への加入状況です。法人であれば原則加入義務がありますが、従業員数の少ない個人クリニックなどでは、加入義務の有無が職場によって異なる場合があります。基本給が高く見えても、社会保険料を自己負担する分、実質的な収入が下がるケースもあります。
「年収」だけでなく、「時給換算」「残業の有無」「ボーナスの実績」「社会保険(厚生年金・健康保険)への加入有無」まで確認することが大切です。
② 職場見学に行かない
求人票や面接だけで判断し、実際の現場を見ずに入職するケースです。スタッフ同士の雰囲気、患者数に対するスタッフの配置、リハビリ室の動線などは、見学しないとわからない情報がほとんどです。
可能であれば、面接とは別日に職場見学をお願いし、実際にリハビリが行われている時間帯の様子を見せてもらうのがおすすめです。
③ 離職理由を整理していない
「なんとなく今の職場が嫌だから」という曖昧な理由で転職活動を始めると、転職後にまた同じ理由で悩むことになりがちです。
例えば「人間関係が嫌」という理由の場合、本当の原因が「特定の上司との相性」なのか、「組織全体の風通しの悪さ」なのかによって、次に選ぶべき職場の基準は変わってきます。
④ 教育体制を確認しない
特に経験年数が浅いうちの転職では、教育体制の有無が定着率に直結します。「教育体制あり」と書かれていても、実態は「先輩に聞けば教えてもらえる」程度のところも少なくありません。
一方で、教育体制が「整っている」こと自体が、必ずしも良い面だけとは限りません。休日や勤務時間外に、自己研鑽という名目で勉強会・研修への参加が実質的に必須となっている職場もあります。
新人・中途向けの研修プログラムがどの程度整っているか、また、それが勤務時間内に実施されるものなのかどうかも、面接で具体的に確認しておくと安心です。
⑤ 残業時間・固定残業代を確認しない
注意したいのが「固定残業代(みなし残業)」の仕組みです。求人票に記載されている給与額には、あらかじめ一定時間分の残業代が含まれている場合があります。この場合、給与額だけを見ると一見高く見えますが、実際の基本給はそれより低く、想定されている残業時間を超えた分だけが追加で支払われる仕組みになっていることがあります。
面接時には、「給与に固定残業代が含まれているか」「含まれている場合、何時間分が想定されているか」を確認しておくと、実態に近い給与イメージを持つことができます。
⑥ SNSや口コミだけで判断する
口コミには投稿者個人の感情や立場が反映されやすく、極端に良い評価、または極端に悪い評価に偏りやすい傾向があります。
その内容が実態と一致している場合もあれば、個人の感じ方によって実態とはかけ離れている場合もあります。良い口コミも悪い口コミも、そのまま信じ込むのではなく、あくまで参考情報の一つとして捉えることが大切です。
最終的な判断は、自分自身の見学・面接での印象と合わせて行うのが安全です。
⑦ 転職サイト・エージェントを1社しか使わない
1つの転職サイトやエージェントだけに頼ると、紹介される求人の選択肢が限られてしまいます。
また、エージェントには「就職を成立させる」という成果目標があるため、希望していた条件と異なる求人を提案されたり、十分に検討する時間がないまま決断を急かされるような場面に出会うこともあります。
複数のエージェントを併用することで、提示される求人や条件を比較できるだけでなく、一つのエージェントの提案やペースに流されすぎず、客観的に判断しやすくなります。
私が実際に見てきた失敗例
ここでは、これまで見聞きしてきたケースを、特定の個人がわからない形に一般化してご紹介します。
ケース1:給料アップだけを目的に整形外科クリニックへ転職したケース
病院よりも基本給が高いことに惹かれてクリニックへ転職したものの、実際の給与体系は単位数に応じたインセンティブ制度が中心で、ノルマを達成できない月は想定していた収入に届かないというケースがありました。
また、保険診療外の自費リハビリも給与に反映される仕組みでしたが、自費リハビリは診療時間外に実施しなければならないため、勤務時間が実質的に延びることが前提となっている職場だったというケースもありました。
ケース2:病院から訪問リハビリへ転職したケース
訪問リハビリは給与のインセンティブ比率が高い職場が多く、訪問件数に応じて収入が変動する仕組みでした。利用者数には限りがあるため、スタッフ間で利用者の獲得を競うような状況になることもありました。
また、首都圏では移動手段が自転車中心になることが多く、夏の暑さや冬の悪天候など、季節による身体的な負担も大きいものでした。さらに、利用者の体調不良で訪問がキャンセルになると、その分のインセンティブも発生せず、収入が下がってしまうという不安定さもありました。
ケース3:口コミの評価の高さだけで転職先を決めたケース
口コミでは「アットホームな職場」と評価されていましたが、実際にはあえて「アットホーム」と強調しなければならないほど、人間関係に課題を抱えている職場であることも少なくありません。
このケースでは、特定のベテランスタッフへの業務負担が大きく偏っており、離職率も高く、常に求人が出ている状態が続いていました。
転職活動を進める際は、以下の項目を一度チェックしてみてください。
- 職場見学をして、実際のリハビリの様子を見たか
- 1日あたりの単位数・ノルマの実態を確認したか
- 有給休暇の取得率を確認したか
- 社会保険(厚生年金・健康保険)への加入状況を確認したか
- 新人・中途向けの研修が、勤務時間内に行われるものかを確認したか
- 給与に固定残業代が含まれているか、含まれる場合は何時間分かを確認したか
- 離職率や定着率について質問したか
- 複数の転職サイト・エージェントを利用し、提示される条件を比較したか
まとめ
理学療法士の転職で後悔しないためには、「給料」という一つの基準だけで判断せず、社会保険や固定残業代の有無といった制度面も含めて、職場の実態を多角的に確認することが大切です。
見学・面接で得られる情報、口コミなどのオンライン情報、複数のエージェントからの情報をあわせて比較することで、転職後のギャップを減らすことができます。
次の記事では、理学療法士が「給料が安い」と感じる理由について、もう少し詳しく掘り下げていきます。
※本記事は、筆者の臨床経験および見聞きした事例をもとに、個人が特定されない形で一般化して構成した情報です。転職に関する個別の判断については、転職エージェント等の専門家へのご相談もあわせてご検討ください。

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